『性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく』というビジョンを掲げるTENGA。
「誰もが」という言葉には、男性、女性、LGBTQ、障害者…性の事はなかなか語られませんが、本当はとても大切なこと。
目次
人として大切なこと
本来マスターベーション(自慰行為)は、人間の根本的な欲求であり誰もが持つ自然な現象です。
そして、誰にでも認められる大切な権利です。
包括的性教育
包括的性教育とは、「自らの健康・幸福・尊厳への気づき、尊厳の上に成り立つ社会的・性的関係の構築、個々人の選択が自己や他者に与える影響への気づき、生涯を通して自らの権利を守ることへの理解を具体化できるための知識や態度等を身につけさせること」です。
教育的効果
その論理的根拠と、教育を効果的に進めるための内容や年齢段階別の学習目標を提示しています。
自らの経験と情報を組み合わせて理解する学習者を中心に据えたアプローチが特徴となっています。
基本概念
包括的性教育に関して、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)が中心となって作成された「国際セクシュアリティ教育ガイダンス(International technical guidance on sexuality education)」というガイダンスが公開されており、国際的な標準的指針として利用されています。(文献5)
主なコンセプトにはこのようなものがあります。
1. 人間関係
2. 価値観、人権、文化、セクシュアリティ
3. ジェンダーの理解
4. 暴力、同意、安全
5. 健康と幸福(well-being)
6. 人間の身体と発達
7. セクシュアリティと性的な行動
8. 性と生殖に関する健康
科学的根拠に基づいていること
1) 科学的根拠に基づいていること
性や生殖、セクシュアリティに関する情報は、人類にとって非常に重要なものであると同時に、非常に個別性の高いものであり、「ある人の持つ身体的構造や嗜好、感情」が別の人に当てはまるわけではありません。
つまり、「誰かの経験や好みに基づいた情報」を教育として用いることはできませんし、それはむしろ有害となる可能性が高いでしょう。
このため、包括的性教育は医療と同様に、「科学的根拠(エビデンス)に基づいた情報」をベースとして提供されるべきだと考えられています。
2016年の科学的根拠のレビューでは、適切なカリキュラムに基づく包括的性教育プログラムによって以下のことが得られると示されています。
・初交年齢が遅くなる
・性交渉の頻度が減る
・性的パートナーの数が減る
・リスクの高い行為が減る
・コンドームの使用が増える
・避妊具の使用が増える(本ガイダンスではコンドームは避妊具ではなく性感染症予防手段と扱われています)
2) 子どもの年齢や成長に沿って進むこと
包括的性教育は、幼少期から始まる継続的な教育とされています。
例えば、一番最初のステップでは「5〜8歳」が対象となっています。
少し驚かれる方もいるでしょうが、「家庭で、自然に子どもが疑問に思う点を少しずつ説明していく」というスタンスが取られているのです。
子どもたちにとって、最も適切な時期に、性や発達に関する話をしてあげる。
これを成長のペースに合わせて提供してあげることが大切だと考えられています。
(3) カリキュラムに基づいたものであること
「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」には、教育者(保護者や教師)をサポートするカリキュラムが掲載されています。
重要となる教育目標、コンセプトの紹介、論理的かつ明確なメッセージの伝達などが書かれており、「情報を提供する側」への支援を重要視していることがわかります。
同時に、「個々人が独自にカリキュラムを作ることによる混乱」を回避する目的もあるのでしょう。
(4) 包括的であること
冒頭でも述べたとおり、包括的性教育では「性と健康」に関するトピックだけを扱うわけではありません。
セクシュアリティ、人権、健康的で互いに敬意を払う対人関係、価値観の尊重、暴力(性暴力を含む)の回避などにも及びます。
多様性を認めるという観点で、例えばLGBTIの人々への根拠なき無理解や差別をなくすことにも言及しています。
日本ではきちんとした性教育の機会があまりないため、多くの子どもや若者はインターネットやアダルトコンテンツから誤った情報やイメージを入手し、それを現実のものとしてパートナーへ要求してしまう。
このような指摘を目にすることも少なくありません。
相手を尊重し、性的なことにもきちんと同意を得て、お互いに幸福を得られるような関係性を築くことにも、包括的性教育は重要なのです。
(5) ジェンダーの平等に基づいていること
「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」では、「包括的性教育にジェンダーの平等性に関する視点を含むことは、より有効な内容とするために不可欠である」と書かれています。
日本では、
・ジェンダーギャップ指数が世界121位かつG7で最下位(2019年度)(文献7)
・2020年の新内閣では閣僚に占める女性の割合がたった10%
という状況です。
世界的にみても低い日本のジェンダーの平等性は、包括的性教育の遅れが影響しているとも考えられるでしょう。